その右腕の拳は今、何を思う【VEGETAPSY4コマ-STORY191】

お父ちゃんはその日から意識が薄れてきました。
彼は一言も言葉を発しなくなりました。

ただ彼はほんの少しだけ残った気力を振り絞り、右腕を高く突き上げました。

そして彼はベッドにすぐ横にある白い壁を、精一杯の力で叩きました。

彼はその行動を、何回も何回も続けました。

「俺はまだ生きなければいけない!!」

薄れていく意識の中で、あなたはそう思っているのですか?

「こんなところで終わってたまるか!!」

あなたは今、そう思っているのですか?

あなたは悔しい気持ちをたくさん持っています。
その思いが自然に右手を動かし、こぶしを突き上げ、壁に怒りをぶつけています。

あなたは私たちを残して一人旅立つのは、寂しいと思っているのでしょうね。
あなたは私たちのことが心配で心配で、仕方がないのでしょう。
あなたは貝ボタンの仕事も中途半端なので、もっと続けたかったのでしょう。

あなたは幼いころから苦労が絶えませんでした。
兄弟(small brother)との確執が原因で、あなたは頑固になりました。
あなたには常識も通用しませんでした。
あなたはお母ちゃんとも毎日のように喧嘩をしていました。

周りの人たちの助言も聞かず、あなたは”自分がすべて正しい”という生き方を貫きました。
私たちもあなたとは幾度となく衝突を繰り返しました。
しかし私たちはそれが嫌になり、あなたとは距離を置くようになりました。

もう遅いかもしれませんが私たちは思います。

あなたともっと話をしておくべきでした…。
もっとあなたと本音で語り合うべきでした…。

伝えることが遅くなってしまったけれど…

お父ちゃん。育ててくれてありがとう。